今回は宮口幸治さんの著書『どうしても頑張れない人たち』を参考にしています。宮口さんは立命館大学の教授であり、それ以前は精神科病院や医療少年院に勤務された経験があります。
宮口さんは「頑張ったら支援する」と言う社会の雰囲気に疑問を感じ『そもそも頑張れない人たちや、怠けてしまう人たちほど支援が必要なのではないか』と考えていました。本書には、頑張れない人たちはどう感じているのか、支援者がどのように関わっていったら良いのかなどについて紹介されています。この本は、子どもに向けてだけではなく、後輩がいたり何かを教える立場にある人が読んでも、ヒントを得られるものになっていると思います。
今回は、著者の宮口さんが経験した、医療少年院の少年が劇的に変わった経験について触れていきます。
今回取り上げた本には、何をするにも否定的に捉える少年についても紹介されていました。その少年は普段から『やってもダメだから』、『なぜやる必要があるのか』と言っていましたが、ある時ソーラン節の練習をしていた時に、必死な表情で汗だくになって踊っていたそうです。私はこれらの話に触れて、人は、何かのきっかけがあれば頑張りたいと言う気持ちになることを感じました。
大人ができることとは
私がこれらの話に触れて、他者が頑張りたいと思えるようにするための一つの方法として、さまざまな環境を提供することができるのではないかと思いました。みなさんも何か少ししたきっかけでそれに夢中になったり、一生懸命頑張りたいと思えたことはあるのではないかと思います。
私は中学の頃体育の選択の授業で、何となくバドミントンを選択しました。仲の良い子と一緒だったこともあり楽しく取り組むことができ、そしてラケットでシャトルを打つ瞬間がたまらなく気持ちが良くて、それが高校大学とバドミントン部を選択するきっかけになりました。バドミントンに取り組んだからこそ学べたこともありますし、精一杯取り組むことの尊さや、成長するために必要なこと、対人関係などを学ぶことができました。中学の時にバドミントンの選択授業が無かったら、私はもっと違う人生を歩んでいたのだと思いますし、精神的にもっと幼いまま大人になってしまったのではないかと思います。
私が中学の時に、バドミントンの選択授業に巡り会えたように、子どもや後輩にそのようなきっかけを提供してあげることで、彼らの人生は大きく変わるのかもしれません。
みんなと同じになりたい
本書では、勉強がかなり苦手な境界知能の中学生にインタビューをした話が紹介されていました。どんな人になりたいかと質問をされたその中学生は『頭がよく、気遣いもできて、みんなから頼られる人になりたい。先生は私のことを、皆と頭のレベルが違うから頭が良くない生徒だと思っている』と言いました。勉強ができない、コミュニケーションが上手く取れず気遣いができないという状況に、その中学生は苦しんでいるようでした。そして周りのように勉強もできて、周りに配慮できるようになりたいと言う気持ちがあるのだと感じました。みんなと同じようになりたいと思っている子どもに対し、『無理しなくていい』『がんばらなくていい』と言っても、その子にとっては慰めにならない、むしろその時の子どもの感情に蓋をしてしまって、子どもが悶々とし続けることが懸念されます。
『私もいつか、頑張っているあの子のように頑張ってみたい』と思うのは、多くの人が抱く感情なのではないかとも思います。それを叶えるためにも、環境の提供は大切なのではないかなと思いました。
参考にさせていただいた本
どうしても頑張れない人たち(宮口幸治さん著)