2010年の夏に、大阪で2人の幼い子どもが亡くなりました。母親が子ども達を50日間マンションで放置したためです。2人の子どもが、誰からも助けられずに苦しんで死んでいってしまったことに胸が苦しくなります。天国では、幸せな生活を送ってほしい。
これから何回かにわけて、この事件についてと、この事件に至るまでに触れていきます。参考にしているのは杉山春さんの書かれた『ルポ虐待 -大阪二児置き去り死事件』と言う本です。※この本は多くの人の証言を参考にしており、事実ではない部分が混ざっている可能性もあります。
子どものSOSに応えられなかったのはなぜか
マンションに置き去りにされていた子どもは、声をあげることでSOSを出していました。インターホン越しのような声が聞こえた時も、激しい泣き声がした時も、そのサインを受け取った1人の女性が児童虐待ホットラインに通報しています。初回の通報時にその女性は『このマンションの303号室で、ほとんど毎晩、深夜に子どもが激しく泣いています。ほかの住民も知っていると思うのですが、母親は、子どもを置いて、働きに出ているのではないでしょうか。』と相談しているのです。しかし、職員が住民票を確認すると、その部屋の住民登録はありませんでした。母はこの時風俗嬢として働いており、寮としてマンションを借り、住民票の登録をしていなかったのです。その後も、職員の勤務が多い日中に何度か訪問していますが、その時点では応答がありませんでした。
隣の家の男性は、ベランダ越しに子どもたちの泣き声を聞いたが、近くのファミリーマンションからの声だろうと気に留めなかったそうです。ホットラインへの通告は、毎回同じ女性からだけでした。そのため職員は別の対応を優先してしまい、徹底した対応へは繋がりませんでした。もし別の人も泣き声に気付いて通告していたら、児相職員の対応が変わっていたのかもしれません。
大阪市は、別の虐待死事件がきっかけで、2009年に24時間態勢の虐待ホットラインが作られました。これにより、前年よりも通告数は倍増しましたが、それに見合うだけの職員が増員されず、夜勤職員も1人のみで即座に対応することが難しかったそうです。職員の数が足りなかったことも、子どもの命を救えなかった一因と考えられます。2人のこの事件直後からは、消防署と連携し、泣き声通報があった場合、消防士が10分から15分で現地に向かい、続いて児相の職員が30分以内に到着することとなりました。その後も警察との連携や対応職員を増やす対応を強化しています。
虐待の早期発見・対応は国民の義務
児童福祉法25条では、『要保護児童を発見した者は、これを市町村、都道府県の設置する福祉事務所若しくは児童相談所又は児童委員会を介して市町村、都道府県の設置する福祉事務所若しくは児童相談所に通告しなければならない』とあります。つまり、どこかで子どもの泣き声やサインを受け取り「近所の子どもが虐待を受けているのではないか」「母親であるあの人は子育てに多くの不安を持っていて、子どもに強く当たっている」などと子どもの危険を感じた時に、私達は児相などに通告する義務があると言うことです。つまり、よその子どもだからと言って、放置してはいけないのです。私達1人ひとりが子どもを守ろうと言う意識が、子ども達の命を守ることに繋がります。
通告先の電話番号は『189』です。『いちはやく』と言う意味があります。電話料金はかからず、連絡は匿名でおこなうことが可能で、秘密は守られます。
むすび
今回は、2人の子どもが亡くなった事件について触れました。そして、私達1人ひとりが子どものサインに気付き、行動を起こすことの大切さを感じました。今も、誰にも助けを求めることができず、その環境が全てだと思い苦しんでいる子どもがいます。その子どもを助けられるのは、私達1人ひとりが、気付けるかどうかと言うことも大きく影響してきます。
参考にさせていただいた本・サイト
ルポ虐待 -大阪二児置き去り死事件(杉山春さん著)