小学校教諭 沼田晶弘先生の講演会。本講演は、募集を開始してからわずか2時間で満席になる程の人気ぶり。Twitterで偶然告知を見つけることができた私は本当にラッキーでした。
本講演では、子どものやる気を引き出すために大人が心がけるポイントを教えていただきました。
意欲を引き出すために私達ができることとは
マズローの欲求5段階説では、『人間の欲求は5段階に構成されており、低階層の欲求が満たされると、より高次の階層の欲求を欲する』とされています。沼田先生はこれを勉強にも当てはめることができると言います。
勉強をがんばる(自己実現欲求を満たす)ためには、まず第一段階の生理的欲求が満たされている必要があります。眠気や空腹、疲労などコンディションが悪いと学習への集中は難しい。このような時沼田先生は重要な学習を避け、重要な学習は朝におこなうと言います。
第二段階は安全欲求。大人が怖く、怒られるような環境では、子どもが委縮してしまい安心した発言や行動がしにくい。沼田先生は、子どもが『この教室では(理由がない限りは)怒られない』、『意見を言っても良い』、『大切にされる』と感じられるような仕掛けを作りまくっています。
第三段階は社会的欲求。仲間が欲しかったり、集団への所属を求めます。一緒に楽しく過ごせる仲間がいれば、一緒に勉強をがんばることもできます。
第四段階は尊厳欲求。自分は大切にされている、認められると思ってからはじめて、自己実現に向けてがんばりたいと思うようになると沼田先生は言います。講演を聞いていて、沼田先生は子どもの尊厳を満たすプロだと思いました。
沼田先生が仕掛けている、尊厳欲求を満たすための関わり
〇『あーポイント』、『おーポイント』
人は『あー』と言う時は共感を意味し、『おー』と言う時は感動や驚きを意味します。『あー』、『おー』を5人以上から集めた発言をした子どもは、『あーポイント』『おーポイント』がたまり、給食でのお替り優先権がもらえる決まりを沼田先生は作りました。誰でも自分の発言に反応してもらえると嬉しいし、尊重されていると思うことができます。周りの仲間を大切にすることもでき、社会的欲求も満たされるのではないかと考えられます。
〇子どもの『誇り』を創り出す
運動や勉強ができなくても、ご飯をたくさん食べる子がいるそう。給食の時間になると、沼田先生はその子に『〇〇さんが今日も活躍する時間ですね~』『(おかわり)いける?』などと関わるそう。子どもが、給食では自分が輝けると、意識化されることで、給食のある学校は楽しい、ここでは自分も役に立てると思うことができます。また、沼田先生は、名マッサージャーを1年で3人は育てあげているそうです。子どもが先生の肩をもみ続けたくなるような関わりをしています(超喜ぶ、しかも具体的に)。名マッサージャーと言う名誉をもらうことができたら、子どもは嬉しくなって家族にも喜んでしてあげるのではないかなと思いました。
その他、承認欲求を満たすための関わりや、失敗できる環境づくりの提供、正直者が得をするような関わりをおこなうなど、たくさんの『仕掛け』を作っています。
〇私が子どものやる気を維持できなかった理由
児童養護施設で、子どもが勉強を頑張りたいと言い出したのに、すぐに勉強を放棄してしまうことに悩んでいました。しかし、そもそもこの子どもは自己実現する前段階の、安全、社会的、尊厳欲求が満たされていないことに気付きました。大人側がまず、子どもが安心できる状況を作る必要があると学びました。
講演の感想
沼田先生はとにかく話が上手かった。引き出しが多くて、説明全てに具体例が入っている程。当日学校の先生が多かったため、学校のエピソードを添えて話をする柔軟性も感じました。
また、ゼロベースで『これは必要なことか・そうじゃないか』を考えるため、学校の先生が頑張っているであろう、子どもとの外遊びや授業で使う工作をあまりしないそうです。沼田先生の話からは、子どものやる気アップだけではなく、先生自身がもっと働きやすくするための知恵を学ぶことができます。
是非、子育てに関わる方も、人のやる気アップを目指す方もそうではない方も、機会があれば一度沼田先生にお会いしてほしいと思います。