今回は、宮口幸治さんの著書『どうしても頑張れない人たち』を参考にしています。宮口さんは立命館大学の教授であり、精神科病院や医療少年院に勤務された経験があります。
本書には、頑張れない人たちはどう感じているのか、支援者がどのように関わっていったら良いのかなどについて紹介されています。この本は、子どもに向けてだけではなく、後輩がいたり何かを教える立場にある人が読んでも、ヒントを得られるものになっていると思います。
今回は、頑張れない人たちが頑張れない一因について触れていきます。
認知機能の低さが頑張れない一因となる
認知機能の認知とは、 心理学的には知覚・判断・想像・推論・決定・記憶・言語理解といったさまざまな要素が含まれます。人の話を見たり聞いたり、その情報から判断したり、想像・推察をしたり、それらの考えを基に、物事を判断したり。これらの力が弱いとどうなるのでしょうか。
例えば勉強に関して、認知機能が低い場合を想像してみます。まず、学校の授業で、黒板の字を写したり、先生の話を理解することが難しいかもしれません。正確にノートに写せないし、先生の言っていることも速いし理解ができないことが想像できます。そして、暗記が困難で、テスト前になっても、テスト勉強のためにすべきことが分からず、何をどれだけやったらどうか分からないため計画を立てることも難しいことが想像できます。そして、これを頑張ったらテストで良い結果を取る事ができると言う想像も難しいのかもしれません。
以上のような高いハードルが何個も目の前に立ちはだかると、本人は歩くことすら断念したくなるのではないかと感じました。
そして認知機能が弱いと先を想像するのが苦手な場合があり、ある研究では知的障害児は探索の深さは1ステップと言う結果が出たそうです。 例えばお金の遣い方も認知機能の弱さは影響してくると思います。月の最初に小遣いが出て、月末にまとまって使いたい予定がある場合に、先を見通すことができると『今お金を遣いたい⇨でも月末にお金が残っていないと辛い⇨今はお金を我慢しよう』と考えることができますが、先を見通すことが難しい場合は『今お金を遣いたい⇨遣おう』となってしまうことが想像できます。
認知機能が弱いと、頑張れないだけではなく、日常生活でも躓きが生じてしまう恐れがあります。
認知機能を高めるためにはどうしたら良いのか
著者の宮口さんは、5年の歳月をかけて『コグトレ』を開発しました。間違い探しやパズルゲームなどのドリルを実施することで、認知機能の強化が期待できます。
また、認知機能が弱い子どもには、習慣的な運動により、認知機能の改善が確認された研究もあります。
むすび
本書では、頑張れない理由として、他にも不適切な養育環境を挙げていました。マズローの欲求5段階説では、安全欲求や生理的欲求が満たされていない場合、高次の自己実現欲求まで到達することができません。例えばお腹も満たされない、命に危険のあるような環境の中で、夢や目標に向かって頑張ろうと思うのは難しい。認知の問題だけではなく、子どもを取り巻く様々な環境が、子どもを頑張れなくさせていると言うことを学びました。他にも、大人の声掛けによって子どものやる気が削がれる場合があることが紹介されていましたが、これについては次回紹介させていただきます。
参考にさせていただいた本
どうしても頑張れない人たち(宮口幸治さん著)