今回は宮口幸治さんの著書『どうしても頑張れない人たち』を参考にしています。宮口さんは立命館大学の教授であり、それ以前は精神科病院や医療少年院に勤務された経験があります。
宮口さんは「頑張ったら支援する」と言う社会の雰囲気に疑問を感じ『そもそも頑張れない人たちや、怠けてしまう人たちほど支援が必要なのではないか』と考えていました。本書には、頑張れない人たちはどう感じているのか、支援者がどのように関わっていったら良いのかなどについて紹介されています。
今回は、頑張れない人たちが『頑張れる 』を支える3つの柱についてを学んでいきます。イラストでは、3つの柱のうちの1つに触れています。
イラストでは、3つの柱の1つ『安心の土台』について触れました。安心の土台に続くのは『伴走者の存在』と『チャレンジできる環境』です。
1.安心の土台
みなさんは、『自分を受け入れてくれるこの場所だから頑張れる』と感じたことはありませんか。それが安心の土台になります。
支援者が、もし『頑張ったら支援をする』と言う姿勢を持っていると、それはつまり『頑張らなかったら見捨てられる』と言う意味にも捉えられます。支援者がいくらいい人で、どれだけ手をかけて丁寧に接しても、被援助者はすぐには応えることができないのだと私は感じていて、大なり小なり、何か問題行動を起こすものだと思います。その原因は、元々約束を守ると言う習慣がないことも理由にあるのだと思いますが、『こんな自分でも愛してくれるか』と不安になって試し行動をしている場合もあります。また、困っていることを解決する能力に乏しく、それを回避するために問題行動を起こす場合もあります。
2010年に起きた、大阪二児置き去り死事件の母である芽衣さん(仮名)は非行少女でしたが、高校時代にありのままの芽衣さんを受け入れてくれた女性の存在で、人が変わったように大きく変化しました。
この女性は、芽衣さんが家出を繰り返そうが嘘をつこうが、芽衣さんの話を丁寧に聞き続けました。そしてありのままの芽衣さんを受け入れたことで、芽衣さんは初めて心の底から安心し、頑張ろうと思うことができたのだと思います。
その人が期待通りに更生をしようが、犯罪を繰り返そうが関係なく支援をすることが安心に繋がりますが、そのためには、その人が生きてきた環境を理解することや、『何があっても関わり続けよう』と言う決意が必用だと私は思います。その決意がないと、その人の行動にいちいち反応して、感情が揺れ動いてしまうためです。
2.伴走者の存在
その人が頑張るためには、自分を見守ってくれる存在は不可欠です。伴走者には、『いつも見てるよ』、『いつでも手伝うよ』と言う気持ちが大切だと宮口さんは言います。
ここで気を付けた方が良いのが、静かに見守ることだそうです。運転の練習をしている時に助手席からいちいち口出しされたら、自分のやるべきことにも集中できないですし、モチベーションも下がってしまいます。
3.チャレンジできる環境
チャレンジするためには、1.2.で触れた安心の土台と伴走者の存在は不可欠です。伴走者がいずにチャレンジできない環境とは、例えば自動車学校内で自動車を運転する技術を身に付けた後で、いきなり外に出て1人で頑張れと言われるようなものだと宮口さんは言います。少しずつできる範囲で挑戦させられるように提案をしていくのが大切なのだと思います。
むすび
この本を読んで、私は今まで『頑張ったら支援します』と言うスタンスで子どもと接していたのかもしれない言うことに気付きました。日常や学校生活で手を抜いている子どもを見て残念に感じたりそれが態度に出たりしていました。
子どもが頑張る以前に、私は子どもが安心できる環境を提供できていないことにも気付きました。子どもが頑張るから優しくするのではなくて、自分が優しく丁寧に関わるから子どもが安心して頑張れるようになるんだと言うことを、意識し続けたいと思いました。
参考にさせていただいた本
どうしても頑張れない人たち(宮口幸治さん著)