2007年当時、世界中に59ある、ザ・リッツ・カールトンを巡った井上登紀子さんの体験記と、ザ・リッツ・カールトン東京総支配人の解説書。今回は、リッツ・カールトンから、家庭に活かせるポイントを学んでいきたいと思います。
リッツ・カールトンのここがすごい
リッツ・カールトンでは、継続的に利用するゲストのどんな些細な好みや情報も、世界のリッツ・カールトンに伝わり共有しています。室温・湿度調整、花や食べ物の好みや情報も。井上さんは、ある国のホテルでコーヒー用のポットがなかったため、ポットと変圧器を常備するようにしたところ、ある日を境に、ホテルの部屋にコーヒーメーカーが置かれるようになり、コーヒー豆の種類まで聞かれることもあったと言います。それは、おそらく井上さんのために用意されたもの。これはどのタイミングで誰が気付いたのでしょうか。井上さんの部屋に用事があり、一瞬だけ部屋を覗いたスタッフが気付いたのかもしれません。ここから私達が学べることは、次のようなことだと思います。
✔スタッフのお客様の事を少しでも知りたいと言う気持ちが、気付きに繋がる
✔大切な人をしっかりと観察することで、何を求めているのか気付ける
家族内でのパートナーや子どもとの関わりにおいて、私が一番大切だと感じることは、『お互いを大切にする(尊重し合う)関係性』だと思います。お互いを大切に想えないと、相手への不満が募り、ストレスが溜まってしまう。まずは自分から、気持ちも行動もプレゼントすることが、尊重し合える関係性作りに大切なのではないかと思いました。
井上さんが体験したサプライズ
井上さんがホテルにて迎えた誕生日の朝のこと。
「井上様おはようございます。お席にご案内いたします」いつものようにスタッフの近江さんはさわやかな笑顔で迎えてくれたが、私のお気に入りの席が空いているにもかかわらず、そちらの方に通してくれない。それでも黙って後を追うと、どんどんレストランの奥のほうに向かっていく。扉の前にたどり着いたところ、どうやらスタッフ用の出入り口らしい。(省略)3階に着く。扉が開く。ふたたび整然と並んだスタッフが待ち構えていて、いっせいに声を揃えて祝福の言葉をかけてくれる。5階につくまで、各階でこの儀式は繰り返され、あたかも劇場のワンシーンとなったように私の脳裏に刻まれた。しばし、言葉を失うしかなかった。私はあまりに意表をつかれ、ハトが豆鉄砲を食ったような間抜けな顔をしていたにちがいない。5階のフレンチレストラン“ラ・べ“は通常、午前中は営業していない。にもかかわらず、その朝、私は「ラ・べ」を独り占めしていた。席に案内された私は、レストランのマネージャー、ルネ・カヴァロ氏直々のサーブで朝食をいただき、その間ずっと、ボサボサのヘアスタイルとTシャツにジーンズのわが身を気にしていた。はたしてこの朝のサプライズのために、どれほどのスタッフが動いてくださったのだろう。私がいつレストランに向かうのかなんて、誰にもわからなかったはず。
朝の忙しい時間帯に、100名以上の方がかけてくれたお祝いの声。コストとか手間とか一切考えず、純粋に相手に喜んでほしいと言う気持ちや行動は、大切な人が一生の宝になるくらいかけがえのないものに繋がることに気付きました。
私が高校生の時、友達が彼氏と喧嘩をした話を聞きました。原因は、彼女が誕生日プレゼントに贈ったニットに、半額表示の値札が付いていたとのこと。この話を聞いて、『もっと安く済む方法とか、手を抜く方法とかを考えてしまうと、その適当な気持ちが大切な人に伝わってしまうんだな・・』と思いました。
必ずしもお金や手間をかければ言い訳ではないとは思いますが、気持ちは良くも悪くも、大切な人に伝わるのだなと思いました。
接客業だけではなく、人と関わる仕事をしている方や、家族を持つ方にお勧めの一冊です。