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祖母を失った少年A -死と性欲の連結-

1997年に神戸で小学生が連続して襲われる事件があり、この事件により山下彩花さんと、土師(はせ)淳くんの尊い命が亡くなりました。その事件の犯人は、当時14歳であった少年『A』でした。Aは子どもの頃、祖母に全てを受け入れられ、愛されている事を感じていました。今回は、Aの人生が大きく変わったきっかけについて触れていきます。参考にしているのは、『絶歌』と『少年Aの深層心理』と言う本です。

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『死』と『性的興奮』の結合

臨床心理士矢幡洋さんは、自著の中で、フロイトの説を言及し、『性欲の発達段階で、何に性欲が向けられるかは、思春期にどんな体験をするかという偶然によってほとんど決定されてしまう』と説明しています。

Aの場合は、祖母の『死』のショックから立ち直れない状況の中で、精通を経験しました。このことが、後に死と性的興奮が結びつきエスカレートした一因ではないかと思います。

『死』を繰り返したのは何故か

Aは、祖母の死を経験した後、祖母の命を奪った『死』と言うものは何か疑問が湧くようになり、虫を殺すようになります。虫を解剖したり動けないようにして、次第に動かなくなるのを夢中になって観察していたのです。

この状況を、矢幡洋さんは『反復脅迫』と言う現象であると説明しています。自己修復が不可能なくらいのダメージを受けることにより、反復して夢に出たり、繰り返し再現してしまうと言う行動が起きると言う現象です。

矢幡さんはAについて次のように述べています。

少年は、小動物の死を時間をかけて観察したとき、結局死に目にあえなかった祖母が病院でゆっくりと死んでいくときに感じたであろう恐怖や苦痛を想像していたのではないか、と私は思う。そして、小動物が死んだとき、しはらく前までは活発に動いていたものがもはや二度と動かずに横たわっている、という生と死のあいだのその断面の不思議さにしびれるような戦慄にふけっていたことだろう。少年が世界で唯一安心を獲得できる場所が失われた。それは彼の心の自己回復システムを恒久的に破壊し、反復脅迫の力によって彼は、ある存在が死によってこの世から消えてしまうという出来事を繰り返したのである。

Aにとっての祖母の死は回復不可能な出来事で、もう誰も頼れる存在がいなくなったのだと言う、地獄に落ちるような悲惨な状況だったことが想像できます。

エスカレートする殺害

Aは、同じ興奮では満足できず、更なる刺激を求めていきました。このような性格は『貪欲』として、精神分析の分野で問題にされるそうです。M・バリントは、このようなエスカレーションは、発達初期に重大な心的障害を受けた人が、相手に『自分の欲求を満足させてくれるのが当然だ』とばかりに、いくらでも自己の欲求をエスカレートさせることを指摘しています。Aには年子の弟がおり、母が弟の世話に気が行ってしまい、Aの心を十分に満たしてあげることができなかったことも想像できます。永遠に喉が渇いた状況のように、欲求を満たそうとしても満たしきれなかった状態だったことが想像できます。

あの時どうしたらよかったのか

Aは自著の中で、祖母があと何年か生きていたら、事件を起こさずに済んでいたのだろうかと書いていました。私も、祖母が生きていたら殺人までは至らなかったと思います。祖母の死を経験しなければ、生き物殺しに走る事はなかったのではないかと思うからです。

祖母は、母の厳しくする子育てには否定的で、良く言い合いになっていたそうです。私が祖母の立場だったら、Aにとって母は恐怖の存在で安心安全を感じることができないと判断し、祖母に代わる愛着対象、心の拠り所を導くことはできたかもしれません。愛着の対象は親ではなくても、今回の祖母や、保育園の先生や、学校の先生でも可能です。Aを受け入れ、Aが安心できる存在がいてくれたら、Aは心的成長も遂げ、人を大切にすることができたのではないかと感じます。

むすび

今回は、Aの人生が大きく変わった出来事についてを触れました。人を傷つけ殺めることは許される事ではありませんが、Aがなぜそのような状況に陥ってしまったのかについてを学び、複雑な気持ちになりました。Aはもし、日常的に安心安全を感じ、伸び伸びと生きている全く違う環境で成長していたら、人を傷つけることなんてなかったのだと思います。そう考えると、産まれてくる環境を選べないことは、とてもかわいそうなことだと思いました。

参考にさせていただいた本

・絶歌(元少年A著)

・「少年A」この子を産んで‥‥‥悔恨の手記(「少年A」の父母著)

・少年Aの深層心理(矢幡洋さん著)