2010年の夏に、マンションで2人の幼い子どもが亡くなりました。母親が子ども達を50日間マンションで放置したためです。このブログでは、2人の子どもの死に至るまでを考察し、どのようにしたら同じことを繰り返さないようにできるかを考えたいです。
母親である芽衣さん(仮名)は子ども時代に、母親からネグレクトなどを受けました。そして父に引き取られた後は感情を受け止められずにいたことに触れました。今回は、芽衣さんの中学時代について知りたいと思います。参考にしているのは杉山春さんの書かれた『ルポ虐待 -大阪二児置き去り死事件』と言う本です。
自分を盛る嘘と、男子との身体の関係
芽衣さんは、よく自分を『盛る』嘘をついていました。また友達とは、自分が上だと言う関係を作ろうとしたそうです。芽衣さんが嘘や優劣関係を意識したのは、自己肯定感が高められずにいたからではないかと感じます。
自己肯定感を高めるためには、親や周囲の大人が関わる中で『あなたは大切な存在だ』と言うことを教えてもらうことが大切だと思います。自分は価値のある人間だと言う感覚が身につくことで、例え他者と比較して劣っているところがあっても、自分は自分だと思うことができるようになると思います。しかし芽衣さんには自分を支えてくれる存在や体験が乏しかったため、自分を盛ることでしか、自分を保つ方法を知らなかったのではないかと考えられます。
また芽衣さんは、中学生にして、性のとば口で、性を生活の糧にしていくことを学びました。中学時代に集団リンチやレイプに遭遇していますが、彼女を守る人はいませんでした。自分には意味のある存在だと知ることができたのなら、性に頼らなくてもよかったのかもしれません。
困難になると『飛ぶ』
若者の中では、トラブルが起きた時に急にいなくなることを『飛ぶ』と言う場合もあるそうですが、芽衣さんは仲間内でトラブルがあった時には良く飛んでいたそうです。なぜこんな行動に出るのでしょうか。
それは、芽衣さん自身が他者との関わりの中で、困難に対処する学習ができていなかったからだと考えられます。困難が対処できるようになるには、例えば大人が芽衣さんの感じている問題に耳を傾ける必要があります。それは一緒に問題に対処する方法を考えるためと言う理由もありますが、まずは芽衣さんの感情が、人として当たり前の感情であると受け止められる必要があったと思います。芽衣さんの感情が肯定されることにより、芽衣さんの中で安心感が芽生え、問題をなんとかしようと思えるようになるのだと考えられます。
母親からネグレクトを受け、父親からは『長女だから』と妹の面倒を任された芽衣さんは、殆ど誰にも話を聞いてもらえず、困難に対処するための練習は難しかったのではないでしょうか。
子ども時代は、大人との愛着関係により、生きるための土台を形成しますが、芽衣さんはこの機会を逃してしまいました。それも、トラブルにより飛ぶ一因になったのではないかと思います。
むすび
中学時代の芽衣さんは家出を繰り返したそうですが、父はそれを探し続け、見つけ続けたそうです。もしみなさんが芽衣さんの父だったら、この時の芽衣さんにどのように関わりますか。私が父なら、今まで苦労させたことを謝りたいですし、この時点で芽衣さんの心は閉ざしているかもしれませんが、とにかく芽衣さんの話を聞きたいと思いました。しかし、中学くらいになって非行に走ってしまうと、そこから育て治すのはとても大変だと感じています。それは非行に走った子どもを身近で見ているからです。非行に走る前に、もっと子どもの心を満たす関りがとても大切だと思います。
参考にさせていただいた本
ルポ虐待 -大阪二児置き去り死事件(杉山春さん著)