今回は、心理学者トマス・ゴードンさんの書かれた『親業』と言う本を参考にしています。親業からは、子どもへの関わり方について学ぶことができます。
親業では、主に2つの話の聞き方についてが紹介されています。前回は受容的な聞き方について学びましたが、今回は能動的な聞き方について学びたいと思います。
能動的な聞き方
能動的な聞き方とは、相手(子ども)の話したい事、話しているその気持ちを積極的に(能動的に)汲んで聞くことを指します。具体的には、親が、子どもの気持ちを言葉で口にし、確認する作業の事を言います。
能動的な聞き方に対して、聞き手が相槌などを中心に聞く聞き方は受容的な聞き方です。
能動的な聞き方の子どもへの影響
子どもが感情を表出した時、大人が子どもの気持ちを汲み取り、その確認作業をすることで、子どもへは次のような効果が表れると記述されています。
①感情を表出し、情緒が安定する
話を聞いてもらうことにより、感情が吐き出され、気持ちが安定するようになります。
②自分の感情を恐れなくなる
子どもは、自分の本当の気持ちを否定されないことにより、大人が理解してくれると感じ、それと同時に自分の否定的な感情を受け入れることができるようになります。
もしこの感情を否定されると、感情の抑圧につながり、この出来事自体を塞ぎ込み、それ以降どうするか考えにくくなることが予想されます。
③子どもの思考を促進することで、自分で問題を解決する力がつく
子どもの考えや気持ちを汲み取りながら、問題を掘り下げることができます。この話し方では基本的に子どもが中心になって意見するので、子どもの問題解決能力が磨かれます。
④子どもは、自分の気持ちを理解してくれる人の自分への愛情を感じることができる
子どもは、自分の気持ちを理解してくれる存在を感じ、自分が大切にされていると感じることができます。
能動的な聞き方の留意点① -相手の話に集中する-
普段私達は、会話中別の事に考えを巡らせてしまうことがあります。海外の研究によると、私達は日常生活の47%、目の前とは違うことを考えているそうです。それは、発言者が発信したキーワードから別の事を考えだしたり、話を聞いているように見えて話を聞いていないと言うようなことです。このように別のことを考えることを、マインドワンダリングと言いますが、それについては次の記事で学んでいます。
話を集中して聞くために、すごくためになる『マインドワンダリング』の理解 - すごい人研究所
相手の話したい事、気持ちに焦点を当てるためには、自分の思考や感情を一時中断した状態が必要です。
能動的な聞き方の留意点②
能動的な聞き方をする時の基本的態度の中で印象に残ったのは、『子どもが自分の感情を扱い、それに取り組み、問題の解決ができる能力を持っていると言う、子どもに対する信頼の心を持たねばならない。子どもが自分で自分の問題を解決するのを、観察することで、この信頼は生まれてくる。』と言う言葉です。そもそも子どもが自分で問題を解決できると信じていなければ、親は口出しをしてしまいます。
私もこの本を読むまでは、私に何ができるかと言うことばかり考えていました。しかし、自分がそうしてきたように、子ども自身も自分で学び育つことができるんだと言うことを、覚えておきたいと感じました。
むすび
私が親業のメソッドを学んだ時に一番感じたことは、『大人は大人らしく、立派な姿を見せたり、立派な事を言わなくていいんだ』と言う安堵感です。
私は児童福祉分野で子どもと関わる中で、大人として、職員としてしっかりしなくてはいけない、子どもにちゃんとした事を言って、子どもに良い影響を与えなければならないと思っていました。
しかし親業の本を読み、親も人間であるから、自分の気持ちを大切にし、子どもにも素直な感情を表現して良いことを学び、子どもが感情を吐き出したり、失敗をした時に、立派な事を言わなくてよくて、子どもが自分で成長することを信じれば良いと言うことを学びました。
(気が変わらなければ、)次は、能動的な聞き方の具体的な例について、学んでいきたいと思います。
参考にさせていただいた本
一番専門的に学びたい場合は、トマス・ゴードンさんの書かれた親業と言う本がお勧めですが、ページ数は一番多いです。
親業(トマス・ゴードンさん著)
「親業」に学ぶ子どもとの接し方(近藤千恵さん著)
教師学入門(土岐圭子さん著)