今回は精神科医・作家の岡田尊司(たかし)さんが書かれた『愛着障害の克服』を参考にしています。愛着とは、人が生きていく上で、子どもを育てる上で必要不可欠なものです。
前回は、ジョン・ボウルビィによる愛着の発見についてを学びました。今回は、ジョン・ボウルビィの共同研究者エインズワースによる研究内容についてを学びます。エインズワースは、どのような条件が安定した愛着を形成させるのかを研究し、愛着の質を測定するテストを開発した人です。
愛着形成のために大切なのは『応答性』
エインズワースは、家族を継続的に注意深く観察することにより、安定した愛着の形成のためには母親(愛着対象)の応答性が大切であることを発見しました。
応答性とは、高い感受性を活用する事です。その時の子どもが何を求めていて、求めていないかを察知して対応することで、子どものニーズに応えた対応ができます。赤ちゃんの場合は、泣いている時にすぐに駆け付け、空腹状態であれば授乳をし、おむつが濡れていて不快だと感じたらすぐに取り換えてあげることで、子どもは安心した環境で生活をすることができます。
一方応答性がない、感受性が乏しい場合は、子どもが求めている時に対応せず、してほしくない事を一方的に押し付けることになります。例えば、赤ちゃんが泣いているのを放置したり、お腹が空いていなくても無理矢理授乳させてしまったりすることに当たります。この状態が続くと、子どもが安心して生活を送ることが難しくなります。
ストレンジシチュエーション法
エインズワースが発見したストレンジシチュエーションについては以前の記事で学びました。
エインズワースは、母親の分離と再会、見知らぬ人の存在を通しての子どもの様子を見ることで、それがどの愛着タイプに該当するか判定する検査を開発しています。それぞれの愛着タイプは、母親の接し方に影響していることも明らかにしています。親がどのように関わるとどのような愛着タイプを形成するかは、今後学んでいきたいと思います。
むすび
エインズワースは家族を観察し続けた結果、愛着理論の基礎を築いていきました。愛着の歴史を知ることで、なぜ愛着が大切なのかを良く理解することができました。
また、心理学とは観察の学問なのだと言うことも感じました。心理学は科学の研究のように数値としてハッキリと結果が出るわけではありませんが、観察結果を根拠に推測したり考察すると言う意味では科学と共通しており、心理学の歴史や理論の背景を知る事で面白みや理解度が増すことを感じました。
私は児童福祉分野に勤める前は、愛着と言う言葉を知らなかったですし、大人の関りが子どもの成長にとって重要であることもあまり分かっていなかったです。私個人的には、あまり良いとは言えない環境で育ってきて、大人になっても生き辛さを抱えていました。しかし読書を通して、愛着や養育者の関りが子どもの人生に大きく影響することを知り、これからは1人でも多くの子どもに、適切な安心した環境で育ってほしいとも思うことができました。こう思うことができたから、私の過去も必要な事だったのかなと感じました。
参考にさせていただいた本
愛着障害の克服 「愛着アプローチ」で、人は変われる(岡田尊司さん著)